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ごとごと、がったん、

時折少し軋む音を出す馬車の上で、
ひどく疲れた顔をした青年が手綱を持ってじっと前を見据えていた。

濃灰の年季が入ったグローブには幾つも傷があり、
土埃で濡れてくたくたになっている。
青年の柔らかそうな金髪にも、返り血や埃がついていて、
とても痛ましかった。

青年の後ろに置かれたゲージには、もう光りの輝きは見えず、
青年もそれを気にする様子はなかった。
ゲージを持っている長髪の青年も、今はぐったりとして深く眠っている。
そのまた後ろでは、二人のユークが日記をぺらぺらと捲っていた。

瘴気の消えた夜空を初めて見て、
思わず青年やその仲間は感嘆のため息をつき、
ぼうっとしてずっと夜空を眺めていた。

夢のような、現実のような、信じられないが
本当にこの身に起こった出来事を思い出しながら、
二人の青年は繋ぎ合った手を離さなかった。

夢じゃなかった、確かにあれはあった、そう言わんばかりに。


「強くなってるかな…」

がたごと、と揺れる御者台の上から、
微かな歌声が聞こえてきて、熟睡していた青年は目を覚ました。

体力は残っていないのだから、その声はひどく震えていた。
音程もあんまり取れていないし、時々思い出す為に歌が途切れる。
けれど、すぐに誰かはわかった。

「キアラン、その歌…」
「ごめん、やっぱり起こしちゃったな。
 あ、村まであと少しみたい」
「おう…、そうか。……もう、着いたんだなあ」

空っぽのままのゲージを見下ろしながら、
ディ・アスはいつもと変わらない欠伸をして、夜空を見上げた。
背伸びが終わると、身軽に御者台の空きへと座った。

「変わる」
「え、あ…ああ、そうだね。僕、ずっとやってたんだっけ…」
「ほい」

奪い取るように手綱をディ・アスに取られ、
キアランは暫くぼうっとした様子で前方を見つめていた。
その頬にはかすり傷が残っていて、
茶色の目は、今は碧眼に変わっている。

「どうしよっかなあ、ディ・アス…」
「何が?」
「この後…すぐじゃないけど、実家に帰らなきゃいけないらしいんだ。
 一応僕、立派な後継者だからさ」

カンテラに照らされた路上の小石を見下ろし、そっと息を吐き出し、
キアランは腰に下げたポーチからショートクリスタルを取った。

*********
澪戦後、村へと帰る途中の話。突発ですので、こちらに。

2007.12.25
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