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世界の果ての、悲しくなるほど蒼くて深い海の牢獄に、
その青年は生きていました。

いつも一人だったので、孤独を感じることもなく、
また友もおらず、家族もいないので、愛を受けることなく。

一体何時からそこに生きていたのか、分からないほどに。


牢獄の鉄格子の中から、丸くて美しい月に青年は毎晩祈りました。

「お月様、お月様、
 私は一度だけで良いので、外に出たいのです。
 外に出て、もっと色々なものを見たいと思うのです」

そして、夜明けが近づいて月が消えるまで、
青年はじっと月を見上げ、それに語りかけ続けます。

夜空にばら撒かれた月と星々は、
まるで蒼いビロードに落ちた宝石と金のネックレスのように美しく、
青年の悲しみをそっと癒してくれました。


何時しか時は過ぎて、青年は大人になり、
けれど牢獄はいつまでも冷たく黒々としていました。

それでも毎晩月を見上げ、一人で静かに祈りの言葉を口にする青年を見て、
月と星々は悲しくなりました。

と、そのとき、月の元へ、
夜空に散らばる星の一つが駆けつけたのです。

その星は綺麗な金色の光を放ち、
毎日あの青年の頭上できらきらと輝いていました。


「お月様、どうぞ私をあの人に合わせてください」

月はひどく驚いて、その小さな星を見下ろしました。

普段から、夜空に浮かぶ星々は時々、地の元へ降り立って、
人間とひと時のワインを楽しんだりしていました。
けれど、日が沈む前には必ず夜空へと戻って、
夜空を照らし出さなければならなかったのです。

心配そうに見下ろす月へ、その小さな星は微笑んで答えました。

「ご存知の通り、私は昼間に浮かぶ星です。
 夜にだけでよいのです、どうか会わせて下さい」

月はその言葉を聞き入れて、星をそっと牢獄へ降ろしました。
夜空の星達はその小さな星へ、暖かいマントと服を着せてやり、
道に迷わないようにと小さなランプを持たせました。

*********
御伽噺のような話を書きたかったので。続きます…。

2007.12.25
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