忍者ブログ
気侭にFFCCで小説やら何やら書いてます。 Sorry, this site is JAPANESE ONLY!!
[1]  [2]  [3]  [11]  [10]  [9]  [8]  [7]  [6
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

瘴気に包まれていても、空は多少濁りながらも美しい青を映し、
穏やかな瞳の奥に潜む張りつめた緊張を少し和らげた。

まるで蜂蜜を髪に溶かしたような金髪を風に揺らしながら、
少年―キアランはゆっくりと深呼吸をした。

「キアラン、早くなさい!ディ・アス君が来てるわよー!」
「えっ、ああ、そうか。もうそんな時間か…」

旅立ちの服に着替え終わり、じっと自分の部屋で窓の外を眺めていたら、
いつの間にかかなりの時間が経っていたらしい。
長年寝なれたベッドに乗せた旅行用のリュックを手に、
キアランは母親の待つ一階へと慌てて向かった。

「母さん、僕の剣と盾は?」
「玄関脇に立てかけてあるわ。…そうだわ!
 ディ・アス君、朝ごはんまだでしょ?
 まだ時間もあるし…朝ごはんうちで食べていきなさいね」
「じゃ、ありがたく。
 キアラン、隣邪魔するぜ」

玄関に立っていたセルキーの少年は、ディ・アスという。
キアランとディ・アスは同い年の幼馴染で仲も良く、
昔から家族ぐるみの付き合いをしていた。
その為、ディ・アスがキアラン家と朝食を共にするのも、
ごく自然な流れだった。
朝食の用意されたテーブルを見て、ディ・アスは感嘆の声を上げた。

「うっほ、旨そう!
 さすがキアランのお母さん、相変わらずの料理の腕だな」
「ふふ、可愛い息子の旅立ちだものね。
 私だって、存分に腕を揮うってものよ」

温かい湯気を立てるまんまるコーンのスープや、
美味しそうに焼きあがった肉のから揚げと魚の塩焼きは、
みているだけでもお腹が減ってくる。
普段から近所付き合いの良いキアランの母、クリスティが
隣の粉ひき一家から頂いたパンには、
しましまリンゴの自家製ジャムをつけて食べる。
それだけでなく、すずなりチェリーのパイがデザートとして出てくるのだ。
育ち盛りの子供たちが喜ばない訳がなかった。

「いただきまあす!」

二人仲良く同時にそう言うと、むしゃむしゃとごちそうに手をつけた。
その様子を眺めながら、クリスティは感慨深い溜息をついた。
言葉が覚束ない頃から仲良しだった二人は、
クリスティが作ったすずなりチェリーのパイが大好きだった。
ディ・アスの母ワム・スとはよく晩御飯のメニューや、
手のかかる息子のことで会話に花を咲かせていた。

「あの泣き虫キアランも、13才なのね。
 なんだか急に老けた気分だわ…」

そんなキアランとディ・アスは、今年、13才になる。
村中に知られたいたずらっ子も、いよいよ、
クリスタルキャラバンとして旅立つ時が訪れたのだった。

*********
長くなりそうなのでとりあえず二分割。

2009/8/19
PR
忍者ブログ [PR]
Template designed by YURI